英語圏への語学留学人気は高まる一方であるが、語学留学研究テーマの多くは、高校生や大学生の言語上達度や言語使用度、現地のネイティブスピーカーとの交流についてである。他国からの留学生との比較や、企業から派遣されたビジネスマンを含めた研究はほとんどない。さらに、若い日本女性の間で語学留学の人気が高い背景を探求するジェンダー研究が増えている中、日本男性の語学留学態度に注目した研究は皆無に近い。本研究は第一年目として、語学留学している日本人男子留学生に焦点を絞り、彼らの言語学習態度・語学留学傾向を、当該留学生と現地の学校関係者の視点から調査した。さらに、性別、年齢、社会的地位(一流企業ビジネスマン、無職、大学生など)、留学形態(個人留学、団体研修)、出身国などの要素によって、語学留学志向や現地での学習態度に違いが見られるのかどうか、探索的に調べることを目指した。2007年7月までに複数の調査候補校へ打診し、北米主要都市複数で開校している大規模校を含め、質の高い教育を提供していることで定評のある5校の語学学校より、協力を得た。そのうちの1校からは、過去10年間の全学生在籍データ(国籍・性別・人数などの基礎統計)を入手した。データ分析の結果、在籍学生数の多いドイツ、ブラジル、スイス、韓国、メキシコ、日本のうち、日本人学生の男女比のみ、男性26.9%・女性73.1%と、大きな偏りが見られた。一方、日本企業によって派遣される研修生や、ビジネス英語クラスを受講する日本人学生の多くは男性であり、男性間の間でも英語学習態度・動機に違いが見られること、そして、その違いには上記の性別や年齢などだけでなく、現時点での英語必要度(仕事上、学業上)や企業の雇用・昇進制度(英語力が決定的な要因なのか)などの要素が関係していることが明らかになった。
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