研究最終年度である平成21年度は、前年度までに制作が完了した前置詞学習教材を用い、その学習効果を検証し、その結果を様々な場で発表することを主眼に置いた。 具体的には、今後のウェブラーニングの可能性を検証するために、前置詞が持つ空間概念をイメージ化した図(イメージ・スキーマ)を(1)紙媒体同様に平面的な静止画として、(2)平面的だが動画として、(3)そして立体的な動画として表示したそれぞれの教材を用いることが、前置詞を含む文の意味理解が促進されるかについて、実験を通して検証を試みた。 その結果として、空間概念を表すイメージを「補助」として利用することはそれを言語的に説明するよりも有意に学習効果があることは判明したものの、ウェブラーニングの特性を活かして、動画や立体的なイメージを用いて学習しても、極めてシンプルな平面的静止画としてのイメージを利用した場合と比べて統計的に有意な差が見られないことが判明した。 この結果は、今後のウェブラーニングを含めたコンピュータを利用した言語学習研究に対して1つの大きな知見を与えると思われる。それは、我々はそれを意識しているか否かに関わらず「より高度なメディアを用いることは学習者の理解や記憶をより高める」という前提に立って教材を開発し、研究を行う傾向にあるが、それが必ずしも学習者によい効果を与えるとは限らないことが判明したからである。 本研究は「どのようなメディアを利用すれば、どのような学習項目に対し、どのような効果が現れるか」について、今後明確なガイドラインの作成が必要となることを示した点において、非常に意味のある研究であったと考えている。
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