研究概要 |
本年度は,研究計画書に基づき,熊本県立大学文学部英語英米文学科の英語教員養成課程に在籍する学生を対象に意図的抽出法(purposeful sampling)を用いた被験者(4名)の選抜を行った。これは特定の研究領域,研究対象,及び研究材料から特殊化(particularization)を試み,更に特定のコンテクストにおいて情報に富む事例(information-rich cases)を適切に入手するためである。被験者選抜後,個別のインタビューとグループでのインタビューを計6回実施し,教育実習前における質的データ(in-depth interview data)の収集を行った。データ収集と同時に,メタファー分析を開始した。確認されたメタファーは,大別すると(1)「英語教育全般に対するイメージに係わるメタファー」,(2)「英語教師の役割に係わるメタファー」,(3)「英語科の授業における生徒のイメージに係わるメタファー」の3種類であった。これらのメタファーについてはデータの細分化・分類化を目的としたコード化(coding)作業が終了しており,現在,各メタファーの背景にある「隠された意味」と被験者による「意味づけのされ方」を分析中である。被験者の教育実習後のデータを教育実習前のものと比較し,「職業的同一性の形成過程」と「信念・指導観の構築過程」との関連性を解明するためのデータべースを作成した。また,社会心理学を中心とした文献資料調査の結果,職業的同一性の実体を明らかにするには,被験者が抱いている「英語科教育・英語教師に対する社会・世間一般のイメージ」についての質的データ収集が必要であることが判明した。従って,データ収集・分析の過程において重要因子として加味することにした。
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