英語の発話の分析では、流暢さ・正確さ・統語的複雑さ・語彙的複雑さの4側面から「談話分析的指標」を用いることが多い。談話分析的指標とは、談話の中で起こる特定の言語特性を数えて算出する指標で、流暢さなど、スピーキングの中の1側面を見る場合でも、様々な指標が存在する。これらの指標は、第二言語習得研究で頻繁に用いられているにもかかわらず、それぞれの指標にはどのような特徴があり、どんな場合にどの指標を用いるべきかについては、あまり議論されていない。また、先行研究において、指標の特徴を扱った研究はわずかながらあるが、包括的とは言いがたく、扱われた観点が限定されており、かつ検討している指標の数が限られているという問題点があり、包括的な枠組みから検討した研究は知る限りない。本研究は、複数の指標の特徴を包括的に探る実証研究である。 2年目においては、以下3点を行った。 第1に、1年目に引き続き、「談話分析的指標(指標)」の先行研究を概観するために、先行研究の情報収集とまとめを行った。 第2に、LTRC2008、全国英語教育学会、日本言語テスト学会等の国内外の学会で最新情報を得た。 第3に、申請者が過去に収集した発話データ(既存発話データ)を様々な指標で再分析し、各指標の特徴を記述した。具体的には、語彙的複雑さの指標に特に焦点を当て、高校生と大学生において、3ヶ月の集中的なスピーキング指導の結果伸びた側面を測定するなど、小さめの違いを検出する際には、「1分あたりの語数」と「ASユニットあたりの結束を示す語の数」が最も適している点等が示された。今後は更に多くの観点で多くの発話を再分析し、より精密な特徴の記述を目指していく。
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