研究概要 |
Swain(1993)のアウトプット仮説では, 言語学習において「話したいことが話せない」場合や「話していることが正しいかどうかわからない」というギャップを感じる時に学習に結びつくという仮説を立てている。このプロジェクトは, 学習者がこの「ギャップの意識」や「正しいかどうか自分なりに仮説を立てて試す(以下, 仮説テスト)」という過程を経て, 暗示的なフィードバック(リキャスト)を受けた場合に効果があると仮説を立て, 検証することを目的としている。この仮説を検証するために, 平成20年度は次のような実験を行った。 平成19年度の調査対象者に加え、日本の大学生21名を集め, 次の3つのグループに分けた。(1)タスクにより「ギャップの意識」「仮説テスト」があった場合にリキャストを行うグループ(9名)(2)タスクにより「ギャップの意識」「仮説テスト」があった場合に, その内容とは関係のないリキャストを行うグループ(7名)(3)タスクにより「ギャップの意識」「仮説テスト」があった場合にリキャストを行わないグループ(5名)であった。 このデータを次のように分析した。音声データ及び映像データをコンピュータに取り込み, インタビュー内容とタスクABの文字起こしをした。再生刺激法で「ギャップの意識」「仮説テスト」が(確認された)項目を数え, さらにリキャスト(の内容)を記録した(グループ(1)(2)のみ)。次に発音タスクA2回目と3回目のアウトプットにリキャストの影響が現れているかを確認した。 (以上のデータをもとに)SPSSにより(分散)分析を行った(ところ, 次のような結果が得られた)。グループ(1)は, グループ(2)より有意に大きかった。 つまり, 「ギャップの意識」「仮説テスト」があった場合にアウトプットが有効に働くことが明らかになった。
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