研究概要 |
本年度の主な成果は天の3である. 1. 日本人英語学習者のリーダビリティ意識に関わるデータの蓄積 リーダビリティについて英語母語話者と日本人英語学習者(以後, 日本人)で異なる意識がみられる英文書データの蓄積を行った. 母語話者に対する学年レベルが付与された英語圏のリーディング教材で, 物語文・説明文のジャンル別で日本人大学生を被験者としたリーディング実験し, 収集した. 実験では連続した3学年各1文書の計3文書を1組として読解し, その後3文書における絶対的な難易度・相対的な順位等を付与した. 2. リーダビリティ推定式との関係性の調査 1のデータの粗い分析では, 説明文において日本人の意識は母語話者と同順, 一部の物語文において保存されない, という傾向がうかがわれた. そごで提案手法および従来のリーダビリティ推定式(母語話者向け7種・日本人向け2種)と日本人の意識の関係について精査し, 特に物語文については語彙の難しさ以外に「テキストの量(〓文数)」が大きな影響を与えていることが明らかとなった. これは非現実的な設定も比較的許される物語文において, テキスト量が少ない場合には, たとえ語彙が易しくても十分な文脈を構築できず, 総合的理解に至らないことが推測された. 推定式でテキストの量を考慮しているものは少なく, 今後の重要な観点である. また物語文においても, ある程度の量を超えると日本人は難しくも感じていることから, 量がリーダビリティに必ずしも線形に作用しているわけではないことも示唆された. 3. 数理モデルの精錬 昨年度の順序口ジットモデルから比例オッズ性を仮定しない数理モデルを検討した. 現在のデータ量に対してモデルの自由度が高すぎるため, 具体的な推定式の構築は見送った. 今後のデータの蓄積に合わせて徐々に現モデルを複雑化していけば, より高精度な推定式の構築が期待される.
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