(1) 全世界に広がるアルメニア人社会のナショナリティは、1920年代にその原形を表出した。ただし、在外アルメニア人社会ではホスト国での同化と異化の間を振幅する過程を経ることになる。その際、ソヴィエト・アルメニアの在外社会に対する宣伝や動員が大きな役割を果たしている点を明らかにする。 (2) 一方、ソヴィエト・アルメニアそのものも、ソ連体制内での「民族共和国」という擬似国民国家を形成していたために、ソ連政府の政策によってその性格は変貌し続けた。特に第二次大戦直後の「祖国帰還運動」を通して、本国と在外アルメニア人コミュニティとのアイデンティティにまつわる相互交流や軋轢を明らかにする。
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