本研究の二年目となった平成20年度は、本補助金の援助により大きな成果をあげることができた。まず第一年目に実施した南フランスへの調査旅行の成果を直ちに論文にまとめ、既に論文集(豊田浩志編『神は細部に宿り給う』南窓社)所収論文の形で公にされた。この論文の中では、これまで我が国では全く取り上げられたことのない、ラテン語とガリア(ケルト)語の用いられた二言語文書資料の分析を通じ、ラテン語のガリア(現フランス)地方への浸透のプロセス解明に、大きな一石を投じることができたと自負している。また購入を進めてきた各種文献・資料を利用して行った研究・検討はそのまま、昨年度後期に東京外国語大学で開講した「ヨーロッパ史料を読む : 多言語併存社会としてのローマ帝国」と題した講義を始めとして、いくつかの大学で担当している講義内容に反映され、社会への還元を行うことができた。また海外への調査旅行に関しては他の予算措置を利用することができ、夏期休暇を利用してトルコ南部(リュキア地方)に赴き、ギリシア語とリュキア語の言語接触という類例について認識を深め、そして資料・書籍のテキストのみからは分からない、現地の様子を垣間見ることができた。こうした活動の中から特に、イタリア半島におけるラテン語以外の言語への意識・理解が高まり、講義中でもエトルリア語、サベッリ(オスク・ウンブリア)語、ウェネト語を取り上げるなどした。こうした言語とラテン語との接触については、本研究の一応の最終年度となる平成21年度に、調査旅行を実施するなどして、更に深く追求する予定である。
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