本研究は17世紀のオランダで日本についてどのような情報がどのようなルートで伝わり、どのように普及・利用・理解されたかを総合的に解明しようとする。 そのために初年度には17世紀オランダの出版史、文学史、社会・思想史、東インド関連資料に関する参考文献および各種目録を網羅的に収集し、これらの文献および国際日本文化研究センター所蔵目本関係欧文図書目録、コルディエ『日本書誌』、ティーレ『オランダ地理・民族学文献目録』を中心に、日本についての記事が掲載されている可能性のある旅行記・博学書・啓蒙書・百科事典などの資料のチェックリスト(30頁)を作成し、OPACや各種目録を利用して、これらの資料の所蔵先を日本およびオランダの各図書館で調査した。その結果、日本情報の伝達手段として旅行記が大半を占め、その他に、オランダ商館員やオランダ商館日記からの情報に基づいた著作も重要な役割を果たしていたということが明らかになった。その一方で、モンターヌスとハザールの論争を除けば、これらの情報を利用した著作が皆無に近く、それらが出現するのは18世紀まで待たなければならない。 日本情報の重要な伝達手段であった旅行記を調査し、17世紀オランダ旅行記文学をその性質に応じて分類し、その分類を踏まえてこれらの旅行記の成り立ちや出版事情について解明した。以上の旅行記の代表的な著作としてスハウテン『東インド紀行』を取り上げ、旅行記のジャンルの中での位置づけを行った後に著者・書誌・内容について詳解し、日本関係記述を分析した(以上、『日本研究』に発表)。 また、日本情報のもう一つの伝達ルートとして「オランダ商館日記」を取り上げ、商館日記について、東インド会社の組織の中での機能およびその形態や内容について解明し、東インド会社倒産後の写本がどのように継承され、その中の日本記述のある文書の現存について明らかにした(以上、『日文研』に発表)。
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