本研究の目的は、17世紀オランダで日本についてどのような情報がどのような経路で伝わり、その情報がどのように普及・利用・理解されたかを総合的に解明することである。 平成20年度には、前年度に行った日本国内資料調査をもとにアムステルダム大学図書館を訪書し、日本についての記述が掲載されている可能性のあるオランダの17世紀出版物を調査した。この調査結果として、17世紀オランダで出版された日本関係図書の仮目録を完成した。これに加えて、オランダ国立文書館にて東インド会社文書を調査したところ、平戸や出島のオランダ商館の日記や書翰を通じてもたらされた日本に関する情報量の豊富さを確認できた。また、初期の東方案内記や東インド会社の総督関連文書の精査によって、オランダ人がアジアに進出する初期段階において、東インドの香辛料の獲得の他に、日本との貿易も重要な動機であったことを裏付ける有意義な情報を確認した。 以上をもって、17世紀における日蘭関係および日本情報の伝達経路に関する調査を完了し、その成果を論文にまとめた(未発表)。 なお、資料調査と並行して日本情報の分析を行った。その中間報告として、リスボンで行われた日本資料専門家欧州協会(European Association of Japanese Resource Specialists)において「日文研所蔵日本関係欧文図書コレクションについて」の題で日本関係図書の位置づけおよび性質について発表し、日文研一般公開講演会では「西洋人の見た日本」の題で日本関係図書における日本情報について発表した。また、『旅と日本発見』に掲載した論文「オランダ商館型日本観と鎖国」で鎖国によるオランダ人の日本観の変遷を分析した。
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