実施2年目の本年度は、目的を遂行するため、実施計画に即して、以下の研究を実施し成果を得た。 (1) 場所請負証文関係史料の閲覧・収集作業については、昨年度に得られた情報に基づき、岐阜県歴史資料館・余市町水産博物館ならびに北海道大学附属図書館北方資料室を訪問することにより実施した。いずれも、複数の場所請負証文の収集が叶い、目的が達せられた。とくに岐阜県歴史資料館所蔵飛騨屋久兵衛家文書の閲覧・収集作業からは、場所請負証文のみならず、請負実現・罷免に関する藩・幕府との往復文書を見出すことができ、より精緻な分析を行う素材を得ることが出来るという点で、重要な成果となった。 (2) 上記により得られた証文のリストを作成し、目録化を行った。この作業は途中である。 (3) それと併行して、基礎史料の翻刻作業にも着手した。この作業も途中である。 (4) 場所請負証文関係史料の分析を行う研究室環境を整えるため、近世北方史・水産史関係の文献を購入した。これに基づいて、次年度以降の研究に備えることが叶った。と同時に、場所請負証文の文言の変化の推移と連動する要素として、第一次蝦夷地上知の画期性が挙げられることの背景に、幕府の対外観 (鎖国認識) の変化という政治的ファクターを併せ考える必要性を強く認識することができた。このことは、近世の対外政策の変化が在地社会へ直接影響を及ぼしたという点で重要である。次年度以降、分析に際しての留意点としたい。
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