本年度は、先ず前年度に発見した京都上京芝大宮町関係の新出史料、史料編纂所所蔵「芝大宮町文書」の整理を行い、その中核となる算用帳(町入用関係史料)の翻刻・紹介を行った。また既知の芝大宮町共有(京都市歴史資料館寄託)「芝大宮町文書」の算用帳や土地帳簿を併せて利用することにより、芝大宮町の財務構造について分析し、併せて芝大宮町の空間復元を行った。その中で、芝大宮町の自立した財政の成立には、町の氏神である今宮神社が一定の機能を果たしていることが確認できた。今宮神社は氏神として町構成員の単なる精神的紐帯として存在するだけでなく、世俗的な人的結合や町の自立した運営を支える機能を果たしていることが明らかになった。この部分について考察した論文は次年度発表することが決まっている。 次に、昨年度から分析を開始している薬師寺については、前年度蒐集した刊行史料の記事から、中世の財務部門ごとに、寺家財政に関連する記事を抜き出す作業を行った。中世薬師寺の財政は、寺家全体を統括する一つの部門により掌握されているわけではなく、各法会や色々な用途ごとに自立した固有の財務部門を構成し、それらの総体として成り立っているため、それらの部門ごとに考察を進める必要がある。また近世の日記類の調査撮影を継続するとともに、新発見の算用帳簿類の整理を始め、一部撮影に着手した。
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