本年度は、朝鮮在住日本人社会と地方自治に関する基礎データの収集と、地方自治の背景としての植民地「政治史」の究明のための作業を行った。 (1)資料収集 : 植民地朝鮮で刊行された各種の新聞・雑誌、朝鮮総督府側の公文書を中心に、地方自治選挙の状況、当選・落選者のデータ、地方自治機構の活動内容について調査を行った。国内では国立国会図書館(憲政資料室)にて朝鮮統治に関わる文書資料を中心に調査する一方、韓国に出張し、国家記録院所蔵の「朝鮮総督府文書」から地方レベルにおける選挙の諸相に関わる文書資料の調査・収集を行った。 (2)基礎データの集積 : 地方自治および地方名望家集団の分析のための基礎作業として、植民地朝鮮における地方自治議会の選挙関連データを収集・整理すると共に、地方名望家に関する人物情報データの集積を行い、朝鮮在住日本人・朝鮮人・その他の外国人を網羅する約5000件の基礎デー整理した。 (3)地方自治の背景として植民地「政治史」の研究 1910年代における地方自治に対する抑圧、在朝日本人名望家の政治活動に関する取締政策の背景として、「武断統治」の対在朝日本人政策に関する研究を進行し、その研究成果を米国で開催された国際学会(AAS 2008)にて報告した。同内容は、加筆・修正の上、翌年度に学術雑誌に投稿する予定である。また、植民地統治と中央の政策・政治変動の視座から、在朝日本人出身衆議院議員の事例、在外在留日本国民の在留禁止制度などに関する研究を進め、その成果を国際日本文化研究センター、中央研究院台湾史研究所(台湾)にて発表した。
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