今年度は、まずは後七日御修法関係史料の収集をおこなった。東寺百合文書の写真版を購入したほか、科研費不足により別経費からの旅費支出ではあったが、9月に東京へ出張し、国立公文書館や国立国会図書館において史料調査をおこない、史料収集をおこなった。 また、後七日御修法の大阿闍梨となってこの修法を主導する東寺長者について、歴代の人名録をとりまとめる作業をおこなった。従来、歴代の東寺長者の僧名をまとめた表については、複数存在した東寺長者のうち、筆頭の一長者の僧名のみをあつめたものしかなかった。ところが後七日御修法の大阿闍梨は、一長者のみならず全ての東寺長者(最大4名)の中から選ばれるものであった。従って、歴代の一長者のみをあつめた僧名録だけでは使いものにならず、東寺長者を全て網羅した僧名録が必要不可欠であった。それにもかかわらず、これまでそのような僧名録が皆無であったのは、複数の東寺長者たちの序列が複雑に変動したため、技術的に作表が難しかったためである。そこで今回工夫をこらし、今年度は、ひとまず活字化されている続々群書類従本『東寺長者補任』に基づき、平安時代から南北朝時代くらいまでのデータをとりまとめて仮入力した。同時にこの作表データには、後七日御修法の大阿闍梨の名や、実施期間などの情報を盛り込んでデータ整理している。 更に今年度には、具体的な研究にも入り、平成20年5月の脱稿にむけて「平安時代後期の東寺定額僧(仮)」と題する研究論文を執筆中である。後七日御修法には、永久元年(1113)に大きな変化がある。この時期の御修法の担い手となっていた僧団組織とその変化については、従来かならずしも具体的に明らかにされてこなかったが、そうした研究状況を克服しつつある。
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