平成19年度は「1、映画企業関係者への聞き取り」「2、映画企業関連文献の収集」を実施した。 「1、映画企業関係者への聞き取り」では、昭和30年代のいわゆる「日本映画黄金期」に松竹に勤務していた関係者への聞き取りを実施し、社史・文献では不明確であった、城戸四郎体制下における松竹社内の意思決定過程や人事の決定過程、作品製作プロセスが明らかになった。 「2、映画企業関連支献の収集」では、戦時体制から戦後の自由競争への移行期における大手映画会社の動向把握を目的として、国立公文書館所蔵の過度経済力集中排除法関運資料・国会図書館憲政資料室所蔵のGHQ/SCAP文書の調査・収集を行った。その結果、松竹・東宝が指定を受け大映・日活・東横映画が指定対象外となった経緯が整理され、当時の日本映画市場における各社の活動状況が判明した。現在、大手映画会社が過度経済力集中排除法の対象に含められていく過程を明らかにすると同時に、独占禁止法と映画産業との関連についても調査・資料収集を進めており、昭和20年代日本経済における映画産業の位置づけを明確化することで、日本映画産業の発達過程を戦前・戦中・戦後期と連続的かつ多面的に解明することが可能になると思われる。本項についてはデータ分析と考察を論文化し、平成20年度に投稿予定である。また、本項の作業と並行して、歴史資料としての映画企業関連資料の特性を分析し、資料情況と整理・保存・公開に関する考察を『アーカイブズ学研究』に発表した。
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