本研究は、映画関係者へのインタビューを行い、文書資料との複合的な検討により、戦後日本映画の発達過程を産業の観点から明確化し、その特質を抽出することを目的とする。映画は芸術であると同時に、配給という流通過程を経て映画館で消費される「商品」である。また映画は時代や社会の雰囲気を想起する指標として用いられ「日本映画黄金期」「日本映画斜陽期」という用語が頻繁に使用される。しかしこれらの用語は曖昧な共通認識として使用され、その構成要素は明らかではない。これは映画関連企業資料の不足と、映画産業の特性が解明されていないことに起因する。映画関連研究において、官公庁・企業・文書館における映画関係資料の実証的研究は不足しており、また俳優・監督など直接の製作従事者を除き、経営者・プロデューサーなどへの聞き取り調査はほとんど実施されていない。 本研究は、文字資料である映画企業関連資料の収集・分析とともに、オーラルヒストリーの概念に基づき映画企業関係者への聞き取り調査を実施することで、(1)映画関連企業の経営・市場構築過程の解明(2)映画産業を構築する人的関係の把握(3)大手日本映画製作会社各社の特性の明確化を図り、より立体的な産業・文化研究を試みるものである
|