研究概要 |
中世の地域社会における多くの行動様式に対しては,信仰のありようが深く関わっており,これら地域における信仰形態を検討することによって,地域社会を復元することが可能になる.そこでは信仰関係の対象物およびそれにかかる信仰形態に関するアプローチの深化が求められる.しかし,これらの検討については,ほんらい前提になるはずの地域信仰のあり方の研究が,製作された対象物そのものによって規定されてきた.そこで本研究においては,越後国内における信仰関係の対象物およびその製作に関わる社会的は背景,また社会関係を検討し,信仰のあり方を解明することを目的とする. 平成20年度においては,下越地域における信仰関連の伝世品を中心にして検討を行った.さらにまた古文書調査の検討については平成19年度より引き続いて行った.伝世品の銘文においては,室町時代前期の銘文をもつ仏像について,同仏像の所蔵者がほかに所蔵する古文書等と比較検討した結果,本仏像が江戸時代中期頃には製作当初のものとは異なる名称で地域信仰の対象となっていたことを確認した.仏像そのものの伝来経緯についてはなお検討を進める必要があるが,由来の変更についてもさらに中世における地域信仰の変動から考えていく必要も必要があろう. なお古文書の検討にあたっては,上杉氏に関わる古文書のうち,起請文のとくに神文から神仏に関する検討を継続中である.これらについて,地域寺社等を含めた検討を進めていく予定である.
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