本申請研究は、古代都城の中枢に位置する大極殿とそこで行われる儀式の変遷を、成立から終焉までを対象に考察することを目的とするもので、研究成果は以下のとおりである。 (1) 古代都城儀式にかかわる文献史料と発掘調査の検出遺構・出土遺物の検討を行い、平城宮第一次大極殿院の成立と変遷過程を明らかにしたほか、大嘗宮遺構の検討から、平城宮中枢部の機能と宮の呼称、とくに中宮院の比定地を明らかにした。 (2) 平城宮跡第一次大極殿院地区・中央区朝堂院地区から出土した木簡約5000点のうち、釈読可能な木簡1617点を集成した正報告書『平城宮木簡七』を奈良文化財研究所史料第85冊として刊行し、その編集を担当した。 (3) 大極殿・朝堂院(八省院)に関係する史料収集を継続した。このうち、平安宮第2次大極殿が完成した元慶3年〈879〉10月から最後の朝賀が行われる正暦4年〈993〉正月までの史料は、既刊『大極殿関係史料(稿)』(現在2冊刊行)の続編となる3冊目の史料集として刊行予定で、研究期間内にA4判250頁分の草稿を作成した。 本申請研究では、平城宮中枢部の変遷と歴史的意義を明確にするとともに、出土木簡、文献史料の網羅的収集からなる古代都城中枢部の基礎資料を作成した。平城遷都1300年にあたり、復原工事が終了した平城宮第一次大極殿と大極殿院の活用方法があらためて課題となっている現在において、その成果は、古代史研究のみならず史跡の活用方法の検討にも資することとなろう。
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