進士が編纂する同期合格者名簿には、「同年歯録」(私的)と「登科録」(公的)が存在するが、この二種類の名簿には同一人物の個人情報に食い違いが見られる。前年度(平成20年)までに、その具体的な事実の確定を進めてきたが、本年度(平成21年)は、その現象(「官年現象」と通称される)の原因と背景に検討を進めた。その結果、それは従来先行研究が指摘したような、特定の官職(特に御史)における年齢制限をクリアするためといったものではなく、段階的な科挙受験システムの構造に起因することを明らかにし、類似の現象は宋代にも見られるが、少なくとも明代・清代のそれは、生員・挙人といった広範囲の人間が関係している点において、「考試文化・慣習」と呼べるものであったと考察した。そしてその成果について、国際科挙検討会-第五届科挙制与科挙学検討会-(8月、北海道大学)において発表し、多方面の科挙件研究者から様々な助言を得た。同時に、「登科録」編纂の過程に不明な点が多く、そのことが「官年現象」分析に障害になっていると考え、試巻が提出されてから登科録が編纂されるまでの具体的な手続について分析を試み、応用科挙史学研究会第三回ワークショップ/第五届「科挙制与科挙学」検討会対策第二場(7月、東北大学)において発表を行った。
|