本研究では、近現代インドにおいて歴史記述のあり方がいかに変遷したのかを、インド西部グジャラート地方の知識人層に焦点をあてて検討した。その結果、この地方において、独立前後の政治過程を背景に、インドの統一性を強調する歴史記述が台頭したことや、その一方で特定のコミュニティの立場から、コミュニティごとの差異を強調しつつ「インド」との関係を模索する多様な歴史像が表されたことが明らかになった。さらに本研究は、これらの歴史認識が、独立後の州再編過程や、宗教コミュニティ間、地域間関係をめぐる議論といかに連関していたのかを具体的に示した。
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