本年度は、コンピュータ・金文を文字データとして扱うことの可能なTron(OS)・スキャナ・デジタルカメラ等を購入し、上海博楚簡研究会に参加させていただく機会も利用しながら、研究活動とデータベース化のための資料収集を行った。 また本年度の8月に中国の上海・湖南省へ赴き、復旦大学の研究者の案内を受けながら、最新の出土資料である里耶秦簡を拝見させていただくなど、資料調査・収集を行った。3月には北京・河北省へ赴き、戦国時代の陵墓群や都城遺跡を調査するなど、資料収集に努めた。日本国内でも、京都の泉屋博古館などを訪れ、資料の調査を行った。 先秦家族関係資料に関する研究を継続しつつ発展させる出発点としての、いわゆる「周代宗法制」に関する研究史の整理作業については、これをほぼ完成させ、年度末の時点で、公表のやり方を検討する段階にある。 そして白川静と松本雅明の『詩経』研究を比較対照した論考を公表する機会を得た。いうまでもなく、『詩経』は「周代宗法制」を研究する上での重要資料であり、本研究と大きな関連性をもっている。 ヨーロッパの学者による、漢代の春秋学に関する論文の翻訳も公表した。春秋学が依拠するところである『春秋』およびその三伝は、「周代宗法制」に関する重要資料でもあって、本研究と大きな関わりをもっている。しかも、この翻訳作業は単に個別の研究テーマとして意味があるだけではなく、日本・欧州間の学術交流としての役割もある。 本年度末には、先秦家族関係資料の研究に関する著書を出版した。これは本研究と共通するテーマを扱うとともに、本研究の前提・基礎作業としての意味ももつものである。
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