今年度は9月1日より育児休業を取得するため、8月31日をもって本課題の研究期間を中断することとなったが(平成21年3月31日まで中断の予定)、それまでの研究期間内には、以下の研究に取り組んだ。 1)儀礼制度や礼学の歴史的展開が軍事儀礼におよぼした影響に関する分析 漢から魏晋南北朝時代までの礼学史に関わる先行研究を収集・分析して、平成19年度に作成した北朝軍事儀礼実施例のデータベースと突き合わせ、軍事儀礼の動向が礼学の展開とどう連動するのかについての検討に着手した。 2)他領域の成果の参照・中国史との比較検討 骨本史・ヨーロッパ史の軍事儀礼研究や、人類学・考古学等の狩猟研究などを参照し、中国専制国家の狩猟儀礼における獲物共食の意味を、多様な視角から検討した。現時点では、獲物を共食する場として、祖先祭祀の場である宗廟を重視している点に、中国的要素の重要なポイントが潜在しているのではないかと考えており、ひきつづき掘り下げていきたい。 3)下級武官に関する資料の収集 宿衛として君主の側近に侍従した下級武官に関する資料(特に墓誌類)の収集に着手した。また研究の一環として参加した学会(唐代史研究会、8月25日〜27日)では、新羅などの隣接諸国が高官の子弟を宿衛武官として唐へ送り込み、それが国際関係の重要なカギを握っていたことが、シンポジウムのなかから明らかとなり、本課題においても大きな示唆を得ることができた。
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