本課題は近代東北アジアにおける中国系移民の受容と排除を、極東ロシア華僑を主な対象として調査分析する。 本年度は移民送出地である山東省の情況を重点的に調査するとともに、その成果を研究会で報告し、日本の山東出身華僑の情況についても調査を行った。 具体的には、平成19年8月22日から25日にかけて中国山東省竜口市にて調査を実施した。竜口市博物館での資料調査とともに、地方史研究者から、中国東北地域やロシアへの移民の情況について教示をうけるとともに、移民の送出地の地理的歴史的情況の観察を行った。 また平成20年2月15日から19日にかけて研究協力者の蒋恵民氏を招聘し、研究会「東北アジア華僑のなかの山東幇」(神戸華僑歴史博物館にて)を開催し、山東出身華僑について研究交流を行った。この研究会では朝鮮の山東出身華僑について京都創成大学准教授李正熙氏からのコメント、神戸在住山東華僑について兵庫県山東同郷会会長からのコメントを得た。 本年度の研究であきらかになったのは、山東出身者の間の人間関係が他の華僑に比べて濃密な点である。華僑の間には同郷人間に強い紐帯があることがすでに指摘されてきたが、山東出身者はそのなかでも仲間意識が強く、集団での活動を重視するという指摘を受けた。このような濃密な同郷関係があるため、出稼ぎに出ることに不安を感じることがなく、出身地を離れて商業活動に従事しなければ一人前とはいえないという価値観が社会で共有されていた。
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