本課題は近代東北アジアにおける中国系移民の受容と排除を対象として調査分析を行う。特にその場合に対象となるのは山東半島北岸を出身地とし、一般に山東幇と呼ばれるグループである。 本年度は、この移民の中国東北地域の奉天において経済界で排除される過程を「奉天-権力性商人と糧桟」安冨歩・深尾葉子編『「満洲」の成立:森林の消尽と近代空間の形成』名古屋大学出版会所収)をまとめた。また、山東幇の東北アジアにおける展開を「東北アジアにおける中国人移動の変遷1860-1945」として、「現代「中国」の社会変容と東アジアの新環境」第三回国際シンポジウムで報告した。調査活動は以下3点を中心に行った。6月に台湾、9月に上海ではフィールドワークと梢案館で、東北アジアから外への人口移動の現状およびその後裔の現状について調査を行った。2月には現在の神戸大阪の山東幇の活動について聞き取り調査を行うとともに、神戸華僑の神戸での受容の例として、春節祭・神戸華僑歴史博物館についての記録映像の撮影を行った。また1月と3月には国会図書館において奉天同善堂や中国東北地域に関する資料の収集閲覧を行った。 以上の活動のなかで明らかになったことは、東北アジアにおいて地域間交易に関わる山東幇は、国内産業の発達および、それを担う資本規模の大きな企業が成長するなかで、大資本育成が政策的に展開され、これにより経済界から排除され経済的地位を後退させていくことが明らかになった。
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