本研究は、ワイマル期ドイツの右翼陣営内での労働運動の発生・展開過程をドイツの公文書館に保管されている一次史料に基づき実証的に分析することを目的とするものである。本研究の出発点となる仮説は、ワイマル期ドイツでは、政治的左翼だけでなく、ナチズム運動や復古的保守陣営などの政治的右翼もまた労働組合など様々な組織を結成して労働者獲得に乗り出していたということである。包括的な「右翼労働運動」をキー概念に、右翼陣営内の各労働者組織の思想・組織構造・活動状況を可能な限り明らかにすることで、ワイマル期の政治的右翼の労働者獲得政策を具体層で捉え、ナチズムと労働者をつなぐ一つの回路を浮き彫りにした。
|