本研究課題の研究成果は次の3点である。第一に、近世ロンドンの外国人教会による救貧は、同胞による困窮移民に対する救済活動として重要な役割を果たした。それは同時に、教会による移民の規律化とアイデンティティ形成の手段でもあった。第二に、18世紀初頭のドイツ系移民はロンドン流入後に支援獲得の手段としてパラタイン移民という自己意識を形成した。彼らの流入は移民に対するイギリス社会の態度を移民規制の方向に転換させた。第三に、他者の顕在化と他者との共生(救貧や法的地位の付与)を巡る議論は、近世イングランド社会(人々)に自己意識の形成を促した。
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