研究概要 |
植民地の法制度に関する研究文献を収集するとともに,植民地時代に刊行された法学書や判例集の調査を行った。とくに後者については,Recueil de la legislation,doctrine et jurisprudence colonialesおよびRecueil general de jurisprudence,de doctrine et de la legislation coloniale et maritimeのかなりの巻が九州大学図書館・東京大学図書館などに所蔵されていることが確かめられたので,国内で調査を進めることができた。ニュー・カレドニアに渡航・移住した日本人については,その歴史に関する展覧会が福岡を含め全国を巡回し,またその子孫が父祖の故地を訪ねて来日した際に知己を得るなど,平成19年は情報収集と人的ネットワーク構築のための稀有な機会となり,それを踏まえて同年12月に現地調査を行った。このテーマについて近年刊行された博士論文の著者やニュー・カレドニア大学前学長,日本人の第三世代である日本国名誉領事をはじめとして多くの知己を得るとともに,この地での歴史研究全般がいまだ開拓的な段階にあり,かつ植民地時代の住民の法的地位については,その制度史を正確に跡付けるという作業が必要な段階にあることが理解された。以上の調査と並行して,第三共和政期の植民地住民の法的地位の全般的状況について,市民/非市民という分類を軸にしてこれまで進めた研究を整理し,別項のとおりの研究発表および論文執筆を行った。フランス史研究において植民地に関する分野は,近年フランスで議論を呼びつつ新たな発展と展開をみせているため,最新の文献と情報の入手に努めつつ上の研究を進めた。
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