考古学者に提供する解読支援技術として、古代文書から収集した情報を用いた文脈処理を実現した。文脈処理とは情報検索技術の一種であり、解読困難な部分の推読を支援する。この技術は、木簡解読の際に必要となる大量の書物と情報の管理から考古学者を解放する第一歩となる。また、考古学者の意見を参考にしながら、解読の際の思考の中断を防止するユーザインタフェースを実現した。高度な知的作業が要求される木簡解読において、専門家が求めるインタフェースは通常のコンピュータソフトウェアのものとは異なる。視認性が高く、誤動作を招きにくいユーザインタフェースを実現することで、解読作業を行う考古学者への負担を軽減し、効果の高い解読支援を提供することが可能となる。また、コンピュータネットワークを用いた考古学者同士の情報共有技術を実現した。この技術は、木簡解読支援システム上で作成された木簡の部分画像、墨強調画像、釈文(完成・未完成を問わない)などを複数の専門家が共有し、ユビキタスな環境における共同解読作業を可能にする。さらに、解読作業によって得られる新たな字体情報や画像処理のノウハウを複数の専門家の間で共有し、解読支援の精度と効果を高めることを可能にする。これらの研究成果を盛り込んだ木簡解読支援システムを奈良文化財研究所のwebページ(http://hiroba.nabunken.go.jp/shakudoku01.htm1)からダウンロードできる。既に多くの専門家、および木簡解読に興味を持つ方にダウンロードしていただいており、意見・要望なども集まりつつある。これらを次年度以降の研究活動に生かし、研究成果につなげていきたいと考えている。
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