平成19年度は、京都大学総合博物館の協力を得て、大阪府堺市七観古墳および滋賀県栗東市大塚越古墳から出土した遺物の資料化に着手した。七観古墳出土遺物については、甲冑・刀剣・鏃・馬具・工具などの金属製品の接合・員数確定・実測、また円筒埴輪・形象埴輪の洗浄・接合・復元・実測などの作業をおこなった。これは1947・1952(昭和22・27)年に実施された発掘調査で出土し、1961(昭和36)年に報告された遺物を、現在の研究水準に即して再報告しようとするものである。七観古墳出土遺物は質・量ともにきわめてすぐれているほか、百舌鳥古墳群から出土した古墳時代中期中葉の標識的資料として周知されており、その再資料化は技術論・系統論・生産組織論などにおいて、古墳時代研究に大きく寄与することが予測される。大塚越古墳出土遺物については、2000点以上におよぶ玉の分類・計測、一部の実測をおこなった。大塚越古墳出土遺物は初現期の三角板革綴短甲・鏡・巴形銅器・琴柱形石製品など古墳時代中期初頭の特色ある組成を示すにもかかわらず、戦前に発掘調査が実施されて以来、正式な報告がなされていないため、その資料化の成果が学界に共有される意義はきわめて大きい。これらの資料化は、学内の学生有志による定期的な作業と、学外の研究協力者を招へいしての2回の集中作業によって実施した。研究協力者は各々の専門領域において最先端で研究を牽引しており、最新の研究動向に即した助言・助力を得ることができた。また、これらの作業は、上述した学術的意義のほか、迅速な保存処理を望めない環境下にある古墳出土遺物について、次善の方策として、劣化が著しく進行する前に実測図・写真などの二次資料を作成しようとする側面ももっている。いずれの作業も完了はしていないため、平成20年度にも継続する予定である。
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