考古遺物の保管・管理状況や研究動向を踏まえ、保存処理が施されておらず、かつ二次資料が十分に整備されていない古墳出土遺物を取り上げ、最新の研究で求められる水準を満たした実測図作成や写真撮影を実施することを自的とした。これらには多様な材質の製品が含まれるため、それぞれについて特性に応じた適切な方法を吟味するとともに、類例の検索やそれらとの比較検討などを通じて、対象遺物の時空間的な位置づけを検討した。また、観察・調査成果を過不足なく伝達するという視点から、以上の成果について、遺物の特性に応じた適切な報告方法を吟味した。平成21年度も19・20年度に引き続き、大阪府七観古墳出土遺物の再整理作業および滋賀県大塚越古墳出土遺物の整理作業を実施したほか、京都府巡礼塚古墳にかえて京都府聖塚古墳出土遺物の整理作業を実施した。 七観古墳出土遺物については、前年度に引き続き実測作業を継続し、これまで鉄鏃・柄付手斧・玉・馬具・刀剣について、ほぼ実測作業が終了した。しかし、細片化や銃化の著しい甲冑、点数の多い埴輪については50%程度の達成率にとどまった。したがって、申請時に目標としていた研究成果報告書の完成にはいたらなかった。大塚越古墳出土遺物については、玉の分類・計測・実測を継続した。聖塚古墳出土遺物については資料化作業を完了し、亀岡市文化資料館刊行の特別展示図録『丹波の方墳再考!』に成果を寄稿した。また、上記の問題意識を兵庫県雲部車塚古墳出土遺物の報告作業においても活かし、報告書『雲部車塚古墳の研究』を作成した。 個別の遺物研究が進展している現在の研究動向に即した、最新の水準を満たした資料化をおこなうため、平成19・20年度と同様、最先端で研究を牽引している複数の研究者に、研究協力者として助力を求めた。また、多量の遺物の整理作業を一人で遂行することは困難であるので、古墳時代を専攻する学生の助力を得て整理作業をおこなった。
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