本年度は、研究初年度にあたるため、基礎的な資料収集に終始し、その成果の一部については考古学講座本(青木書店:2008年度刊行予定)に入校した。 また、以下の機関所蔵の弥生時代に属する石器、金属器、木器を実測、撮影した。まず、東海地方では下呂市教育委員会、一宮市教育委員会、美濃加茂市教育委員会、四日市市教育委員会、三重県埋蔵文化財センター。近畿地方では大阪府埋蔵文化財センター、寝屋川市教育委員会、芦屋市教育委員会、奈良県立橿原考古学研究所、五條市教育委員会。中・四国地方では矢掛町教育委員会、愛媛県埋蔵文化財センター、愛媛大学。九州市立自然史博物館、北九州市埋蔵文化財センター、九州歴史資料館、行橋市教育委員会、福岡市埋蔵文化財センター、小城市教育委員会、小郡市教育委員会である。また、併行して主に西日本の弥生遺跡出土の石器や金属器とともに着装に関わる木製柄などが出土している遺跡のデータ収集に努めた。 成果としては次の2点があげられる。まず、弥生時代開始期において新に出現する石製短剣には、剣身と柄がともに石材で一体に作り出されたもの(一体式)と剣身は石材で製作され柄は木材でできたもの(別柄式)があり、前者と後者ではその取り扱いや普及に著しい違いがあることが判明した。また北部九州を内地域では前者が主体であり、取り扱われ方も大きく異なることが明らかとなった。この地域差の背景には金属器の受容の違いが想定され、本年度検討できなかった木工具の問題とともに次年度以降検討を進めていく予定である。
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