中国新石器時代の食品加工具である「すりうす」の使用痕分析を通して、食品に対する働きかけを分析し生産活動と多様な社会(集団)の「動態」、それに伴う文化要素を明らかにすることが本研究の目的である。そのために、「すりうす」の使用痕サンプルを作成し、実験考古学的な要素を取り入れながら用途と加工対象物別に使用モデルを構築する。これをもとに実物資料を観察し、「すりうす」の加工面の肉眼観察と顕微鏡レベルにおける使用痕分析を行い、「すりうす」の使用目的と食品加工の実態、加工対象物を明らかにすることが研究機関内における目標である。 本年度は、「すりうす」の使用痕サンプルを作成するために、国内における石製品製作の現状調査を実施し、石材の扱い方や加工の方法について資料を収集し、サンプル作製を開始した。サンプルの石材には砂岩を使用し、「すりうす」同様に上石と下石を作成し、穀物を加工した。使用痕は、上石と下石の擦面をについて、主として肉眼観察と実体顕微鏡(OLYMPUS)を使用して観察したが、特に「すりうす」の下石が大型であり、重量と厚みがあることから、顕微鏡を支えるアームと顕微鏡との接続の部品を既定のものから別のものに換えるなどの試行錯誤を行った。サンプル作製時には、加工対象物別に、1000回毎に使用痕を記録し、経過を留めた。これらの過程で、食材の粉化と調理方法、「すりうす」の使用方法などについて、一定の目測を立てることができた。来年度以降は、これらをサンプルとして実物使用との比較検討を実施し、中国における粉食文化の成立に関する研究に有効な結果を導き出すことを目標とする。
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