本研究は、西アジアとアルメニア(トランスコーカサス)における初期農耕文化の成立過程を、主に石器研究によって明らかにすることを目的とする。主な成果としては、以下があげられる。(1)西アジアでは、初期農耕を生み出した地域文化が複数存在すること、また、新石器時代初頭では、農耕・牧畜は未だ定着しておらず、よってこの段階での「農耕・牧畜のパッケージ」が周辺地域へ伝播したことは考えにくいことが分かった。(2)アルメニアでは、前6000年にアララト平野に農耕集落が出現する一方で、高地のアラガツ山地域には、狩猟民の遺跡が、完新世初頭を通じて点在することが明らかとなった。今後アルメニアにおける初期農耕の定着過程を明らかにするには、これら2つの地域文化の関係性に注目していく必要がある。
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