研究概要 |
平成19年度は,大きく二つの作業を行った。 ひとつは,対象資料の写真撮影と,それをもとにした調書の作成である。また,次年度に実施される蛍光X線分析の前提作業として,分析箇所の決定と同所の測色データを採取した。まだ現在のところ測色データは各波長の計測値でしかないが,今後これをRGBデータおよびLabデータに変換していく予定である。 いまひとつは,分析対象となっている館蔵鏡の類例調査が必要と判断されたため,類似資料の実見調査を実施した。国内では,同種の分析報告が為されている鹿児島県勝栗神社蔵鏡をはじめとする薩摩地域の外来鏡について,10月15日〜19日の日程で調査を行った。なお調査資料は,鹿児島県姶良郡湧水町勝栗神社鏡(40面),薩摩川内市宮内町新田神社鏡(38面),日置市吹上町大汝牟遅神社蔵鏡(12面)である。勝栗神社では,蔵鏡40面のうち外来鏡12面を抽出して精査を行った。 さらに,11A22日〜26日には韓国内での調査(国立中央博物館蔵鏡2面,高麗大学校蔵鏡8面)を行った。国立中央博物館にはかなりの数に上る高麗鏡が存在するが,今回その中でも特に「高麗国造」銘をもつ資料を選んで調査を行った。高麗大学校でも今回調査した数以上の高麗鏡(または朝鮮時代鏡)が所蔵されているらしいことがわかった。また,韓国内調査日程中(11月24目)に,国立海洋資料館において新安沈没船に関するシンポジウムが開催されており,こちらへも参加し,韓国内における先行研究の実績を把握した。 なお,対象資料のX線透過画像撮影は,使用予定機材のトラブルにより,次年度に変更せざるを得なくなった。
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