平成20年度は以下の作業を行った。 1)X線透過画像撮影(デジタルデータ)と蛍光X線分析作業 対象となる資料(約230点)の透過画像を確認し、測点の選定を行った上で蛍光X線分析を実施した。測点は、同一資料で表裏を分析するとともに、Cu(銅)・Sn(錫)・Pb(鉛)を主要元素として着目したほか、微量元素Zn(亜鉛)・Hg(水銀)・Sb(アンチモン)などを比較対象とした。測定結果からは、(1)同一資料のうえで複数点分析を行ったところ、各測点での主要元素数値が同じような比率を示すケースと、Pbにおいて全く異なる数値を示す場合とが確認できる、(2)肉眼による鏡面の観察において、塗膜らしきものが指摘できる資料において、Snの数値が高いケースと、これにHgが伴うケースがみとめられる、といった点が看取できた。(1)については、既に1970年前後から指摘されているPbの偏析によると考えられるものの、(2)については必ずしも分析値上でSnの数値が高くない資料においても塗膜を観察できるケースもあり、今後こうした様相をもつ資料において表面状態と分析数値の間にどのような相関性があるのか追求する必要がある。 2)実測作業 これまでの先行研究においても、高麗鏡(または併行期の銅鏡)について断面実測が為された例はそれほど多くなく、型式学的な研究を実施する上での基本情報を整備するため作業を実施した。なお、実測図の作成は経費および時間の制約もあり、一部にとどめざるを得なかったことから、今後も引き続き行う必要がある。
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