研究概要 |
本研究は2002年度に王寺町教育委員会と共同で実施した達磨寺の発掘調査で仏舎利埋納遺構が検出され,舎利を奉籠した水晶製五輪塔形舎利容器が出土したことを契機としている。中世の仏舎利信仰については仏教史学の立場からの研究はおこなわれているものの,宗派を越えた比較研究や,舎利埋納の遺構や遺物に対する考古学的研究はあまり進んでいないのが現状である。本研究では特に,水晶製五輪塔形舎利容器に注目し,集成をおこない,型式学的検討をおこなう。さらに,舎利容器が納置された寺院,遺跡,仏像について歴史的背景などについても調査をおこない,仏舎利の納置について年代による変化があるか,宗派による差異がないか検討する。 平成19年度には資料収集の結果,水晶製五輪塔形舎利容器は中世のものに限定しても全国で70点以上存在していることがわかったが,これらについて,まず基本的なデータベースを作成した。また,資料に遺漏がないか情報収集につとめ,データを補完した。これらの基本データをもとに,検討をおこなうとともに,今後の熟覧調査にむけて準備を進めた。 水晶製五輪塔形舎利容器の分布は奈良・京都・鎌倉に集中しているが,平成19年度には,奈良と京都に所在する資料について熟覧調査,写真撮影などを開始した。
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