本研究の目的は、島嶼部に造られた古墳を「地方」の象徴、海から離れた内陸の古墳を「中央」の象徴ととらえ、中央と地方というキイワードをもとに、古墳時代後期の社会構造について検討するものである。 研究最終年度にあたる本年の成果としては、平成19年度からおこなっていた北九州市小倉南区所在の間島古墳群の測量調査成果を報告したことが挙げられる。報告では間島古墳群の分布調査と、遺存状態のよい1号墳の埋葬施設・墳丘の実測調査の結果を公表した。分布調査の結果、間島古墳群は干潟の中央に浮かぶ小島に造られた総数12基の古墳群で、古墳時代後期に造られたものである。間島1号墳の埋葬施設は単室の横穴式石室で、壁体には島内に散在する花崗岩を使っている。またその構造は間島の対岸に所在する下吉田古墳群の横穴式石室と共通しており、島と陸地という異なる立地ではあるが、両者を一連のものとしてとらえるのが妥当と考えた。下吉田古墳群と間島古墳群の被葬者は曽根干潟を自由に行き来することのできた人物の奥ツ城と考えられ、これらの古墳群に限っていうなら古墳の立地は被葬者の性格に関係しないといえる。つまり、陸地からかなり近い島と、海に面した地は古墳時代のひとびとにとって同じようにとらえられる土地であったと考えられるのである。 なお、本報告によって、これまで確認のみで詳細な報告や実測図の公開がなされていなかった古墳の実態について明らかにすることができた。 そのほか、各地の島嶼部の古墳について現地に赴き調査をおこなった。また、期間中に研究の総まとめにあたる論文成稿が済んでいないため、今後努力したい。
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