本年度には、東京大都市圏・大阪大都市圏・名古屋大都市圏に関して、戦時期から復興期にかけての通勤流動と人口分布の変化を明らかにし、その前後の期間との変化を明らかにすることを目的とした。使用する資料として、まず通勤流動については、戦前期では1930年国勢調査、戦後では1955年国勢調査を使用した。1930年と55年の間には、国勢調査では通勤移動に関する調査は行われていない。そこで、大阪市の1941年の調査、堺市の1944年の調査など自治体が独自に行った調査を収集し、この大都市圏研究において空白とされてきた対象時期の通勤流動の実態を明らかにしようと試みた。さらに比較のために戦後の国勢調査による通勤流動も分析した。 これらの分析の結果を要約すると、東京大都市圏の人口増減を調べると、戦前と戦後にかなりの断絶が見られ、疎開による郊外での人口増加が顕著に見られ、東京都区部の人口が戦前波に回復した1955年には、郊外の人口は戦前の人口を大きく上回っていた。 さらに、1930年と1955年の国勢調査による東京都区部、大阪市、名古屋市の各中心市への通勤圏(1930年は通勤・通学圏)を比較した。その結果、1930年から55年にかけての拡大が顕著であり、1955年以降の拡大よりも顕著であった。この点から、現代の日本の大都市圏の形成過程において、戦時期から復興期にかけての拡大が非常に重要であると言える。
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