本年度は、沖縄諸島地方での現地調査・聞き取りを行った。現地調査の日時・場所は以下の通りである。 ・5月28日〜31日:沖縄県公文書館・沖縄県庁・南城市・糸満市・金光教那覇教会・沖縄県平和祈念財団 ・6月22日〜7月2日:沖縄県公文書館・名護市・糸満市・南城市・南風原町・与那原町・西原町・中城町・白梅同窓会・沖縄県平和祈念財団・沖縄遺族連合会 ・12月19日〜24日:沖縄県公文書館・久米島町・金武町・うるま市 名護市を中心とする北部地域、糸満氏を中心とする南部地域、本島周辺離島としての久米島町という本年度に予定していた地域についてはすべて調査に回ることができ、各地域の特徴について知ることができた。とりわけ5月時および6月時には、慰霊祭の実施現場での観察調査および参加者への聞き取り調査ができ、慰霊祭の地域差についての検討ができた。さらに調査の中で2007年10月に金武町伊芸区で新たに慰霊碑が建立された情報を得ることができ、12月時に現地調査をすることができた。このような慰霊碑・慰霊祭の比較調査はこれまでに実施されたことがなく、重要なものとなる。なお、糸満市の事例については、2008年3月に開催された日本地理学会2008年春季学術大会にて報告を行った。 すべての調査時において資料収集も行った。得られた新聞資料・文書資料についてはデータベース化を行い、聞き取り時の音声資料の一部については文字起こし作業を行った。また、慰霊碑の場所の分析を行うために、地図資料のデジタル化作業を実施した。特に、新聞資料については1950年代から慰霊碑・慰霊祭に関する記事が爆発的に増えることが分かった。このような傾向の発見は、各地に慰霊碑・慰霊祭が伝播していく上で、メディアに現れた慰霊碑・慰霊祭の情報がどれほどの役割を果たしたのだろうかという新たな問題提起にもつながるものでもあり、重要であった。
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