研究概要 |
本年度はまず, 村落空間の民俗分類研究に際しての理論的枠組および哲学的基盤の一つとなる, 人文主義地理学の視点や定義について再考した。具体的には, トゥアン, レルフ, レイという人文主義地理学を代表する三名の論者の所論, およびそれらへの批判論文(書評等を含む)を網羅的に再検討し, 三者の所論を, 1)基本的視点, 2)実際の研究方法, 3 現象学の扱い方, 4)人間観(人間らしさをいかに考えるか), 5)科学観(科学に対してどのような立場をとるか)という五つの視点から比較検討した。その結果, 三者の所論には通説とは異なる部分が多く含まれ, これまで誤解あるいは単純化して理解されることの多かった人文主義地理学には, 実際には大きな違いのある多数の立場が含まれ, 各論者が主張する内容も多様性に富むことの一端が明らかとなった。 次に実証研究として, 村落空間の民俗分類のうち, 各世帯の特徴や独自性が特に表れると予想される, 耕地一筆一筆の名称である「筆名」について, 2つの事例村落をもとに実態を検討した。具体的には, 筆名の名称と由来,命名基準, 地籍上の地番との対応関係, 実際上の一筆との対応関係などである。この研究結果は,現在雑誌論文として投稿中である。
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