2008年8月から9月にかけて、調査対象地域ネパール西部・ヒマラヤ地域のマナン郡において現地調査を実施した。前年度、マナン郡の北側7村をまわって観察し、2008年度は特に観光化の進んでいる、また氷河湖が形成されているマナン村を重点的に調査することにした。 マナン村にある観光施設であるホテルの全戸調査を行い、いつ、誰が、どのようにホテルを開業し、今日どのように経営しているのかを聞き取り調査から明らかにした。その結果、すべてのホテルが畑を所有し、外国人観光客が来ることによって、それまでマナンの村民が食しなったような野菜を栽培するようになったことが分った。キッチン・ガーデン・ホテルというような状況である。ただし、人参や高菜の栽培は観光客による需要だけでなく、農業開発事業や、気温の上昇が関係していることが分った。 マナンに形成された氷河湖がいつごろから形成されて、村にどのよう影響を及ぼしているのかについての古老から聞き取り調査を行った。ここ20年近くの間に急速に氷河湖が形成されたことがわかり、換言すると気温の上昇が、上記の栽培作物種の多様化と連動していることの裏づけとなった。 人口動態については、村の古老数人からライフストーリーを聞き取り、彼らが1960年代から英連邦であるマレーシアやホンコンを始め、東南アジアで行うようになった交易の状況と、カトマンドゥへの移住、そして帰村の過程を、部分的ではあるが、明らかにした。 観光客と、観光客に付き添うガイドやポーターの利用する飲食店において、燃料の利用状況を聞き、薪炭の採取が近隣の森林からほぼできなくなっていることが明らかにされた。また、新しい建物を建てるための資材としても森林を切ることは規制されており、今後の観光開発に大きな支障となることが明らかになった。
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