当年度においては、第二に、いわゆる平成の大合併を経験した新自治体における合併地域内での分護保険の事業特性に関する差異についての、第二に、構成市町村数および人口規模の大きな広域保険者における管内での介護保険事業の差異についての調査・分析を行った。 介護保険に関して、近年の市町村合併は、旧自治体ごとの負担(保険料)を均一化する一方で受益(サービス給付)を必ずしも平準化できない点で地域的公正の観点から問題を生じさせている。そこで、旧自治体別の介護保険について、新自治体となる合併地域全体との間の量的・質的差異を全国スケールで分析した。その結果、新自治体とのサービス給付水準の差異が顕著な旧自治体を抱える新自治体は概して非都市的な地域特性を多く含み、高齢者人口規模などからみた首位都市としての地位が相対的に高い旧自治体にまる編入合併が多いこと、合併によって新自治体との間で著しい給付水準の差異を有する旧自治体は全国的に分布するが、とくに県境地帯の山間部や離島など周辺性を有ずる地域に多いこと、それらの旧自治体は合併前の数年間をみでも事業特性に大きな変化がなく、合併後も受益と負担の不均衡による地域的公正の問題が新自治体内で存続する可能性が示唆されることが明らかになった。 大規模な広域保険者の事例として福岡県介護傷険広域連合についてに分析に着手した。同広域連合は管内人口80万、構成市町村数も39に上り、管内での構成市町村別に見た第1号被保険者当たり給付費に大きな差異を抱えている。とくに給付費の高い田川支部などを中心とした地域の市町村では、その要因として独居高齢者世帯の割合が高く、認定率とくに要介護度の低い要支援・要介護認定者数の割合が高いこと、訪問介護などの事業者数が多いことなどの特性が指摘される。
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