日本における国立公園の風景は、戦前期についてはナショナリズムとの関係性から山岳的風景地が選定されてきたことが指摘されてきた。しかしながら、瀬戸内海国立公園や吉野熊野国立公園の事例から、海国日本を代表する風景として海岸の風景地も国立公園に選定されていたことが認められた。また山岳ではあっても、台湾の大屯国立公園のように、国家を代表する風景地としての価値ではなく、日本人としての心身維持のための休養地として選定された場所があったことも認められた。これらから、戦前期における国立公園の選定において、ナショナリズムと風景の関係は画一的ではなかったことが判明した。また、こうした国立公園の選定にあたっては、特に戦前期においては、自然保護がしばしば軽視される一方で、現地の観光地化と密接に結びついていたことも確認された。
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