研究概要 |
本年度は, 外資系企業が中国投資を行う際に, 地方政府による誘致政策が果たしてきた役割について検討するために, 中国有数の日系企業の進出先として知られる大連市の経済技術開発区を対象地域として取り上げ, 進出している日系企業90社に対して調査依頼を行い, うち40社に大連への進出理由や現在の立地環境に関するアンケート調査及びヒアリングを行った。 本調査の結果として, 進出企業は, 地方政府による誘致活動を, 高く評価していたことが分かった。進出先政府による誘致活動は, 進出企業から見ると, 当該地域の政治情勢やビジネス慣行の違いといった政治的・文化的側面への不安をカバーできるので, 企業立地に際して, 重要な役割を果たしうることが指摘できる。とりわけ, 中国のような社会主義国に進出する際には, このような政府による誘致活動は, 重要な役割を果たすことが指摘できる。 また, 一旦, 大企業の工場誘致に成功すると, サプライヤー等の取引先企業もそれに付随して進出してくるほか, 進出企業とは直接は取引関係がない企業であっても, 多くの日系企業が既に進出しているという実績を評価して, 大連を進出先として選択した企業も見られた。また, 進出企業に対する市政府の対応にも, 高い評価を与えている企業が多く見られた。 大連市政府は, 1984年に経済技術開発区の設置が認められると, いち早く日系企業に絞った誘致活動を行っており, はじめての日中合弁の工場団地を建設する等, 積極的な誘致活動を行ってきており, 同市が顕著な経済発展を遂げた重要な要因となってきたことを明らかにすることができた。
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