研究概要 |
昨年度までに実施した,大連市の経済技術開発区での日系企業90社に対するアンケート調査及びヒアリングを基に,調査内容に考察を加え,国際学会及び国内学会での口頭発表や国内の学術雑誌に論文を投稿する作業を行った。 口頭発表は論文では,大連市に進出した企業は,地方政府による誘致活動を,高く評価していたことが分かったことを指摘した。進出先政府による誘致活動は,進出企業から見ると,当該地域の政治情勢やビジネス慣行の違いといった政治的・文化的側面への不安をカバーできるので,企業立地に際して,重要な役割を果たしうることが指摘できる。とりわけ,中国のような社会主義国に進出する際には,このような政府による誘致活動は,重要な役割を果たしてきたことを指摘した。 大連市政府は,1984年に経済技術開発区の設置が認められると,いち早く日系企業に絞った誘致活動を行っており,はじめての日中合弁の工場団地を建設し,用地の販売も円建てで行い,当時の市長が自ら日本に赴いて投資説明会に参加する等,積極的な誘致活動を行ってきており,同市が顕著な経済発展を遂げた重要な要因となってきたことを明らかにすることができた。また,このような地方政府の役割は,産業誘致活動において,中国国内や第三国との地域間競争が激化している近年,ますます重要性を増していることも指摘した。 このように社会主義国における外資誘致政策において,地方政府が果たした役割について明らかにした本研究は,学会等でも一定の評価を得ることができたと考える。
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