本年度は、タイにおける土着の機械工集団の技能とその形成過程についての研究を行うとともに、それを国家と密接に結びついた土木技師団、外資系企業で働く熟練労働者と比較する作業を行った。その成果は、裏面に記載した共著書として発表した。このような経験的な作業に加えて、本年度は技術研究が人類学にもたらす理論的な影響についての検討を行い、ほか3名の人類学者とともにその成果を学会誌『文化人類学』の特集として発表した。また、技術の研究から見た人類学におけるフェティシズム研究のテーマについて、田中雅一編の論文集『フェティシズム論の系譜と展望』に寄稿した。 本年度はこれまでの研究成果を隣接する分野の国際学会やセミナー等で報告し、学際的な交流を行った。まず、8月にはロッテルダムで開催されたSociety for Social Studies of Science-European Association of Studies of Science and Technologyの合同大会で発表した。また、国内では、大阪大学GCOE「コンフリクトの人文学国際研究教育拠点」の関連研究会などで発表を行ったほか、名古屋大学国際開発研究科におけるSeminar on Skill Development in Thailandでは、タイ人の専門家と議論を交わした。また、研究成果の一部はJICAなど国際開発機関に向けても発表され、社会に運元されることになった。とくに広島大学国際教育開発協力センター主催の研究会では、タイの技術発展の事例が途上国の職業教育支援に持つ意義について文部科学省、国連産業機構、JICAなどの担当者と議論を行った。
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