本年度は、8月にタイにて灌漑技術および農業機械技術についてのフィールドワークを継続するとともに、英語での口頭発表を合計6本行い、研究成果の海外への発信および今後の国際的な共同研究体制の整備につとめた。 6月には台湾で開かれた東アジア科学技術論ネットワークの会議に出席し、イギリス、フランス、台湾、韓国などの研究者と技術の人類学の可能性についての議論を交わした。続いて、7月にはハンガリー、デンマーク、アメリカの研究者と大阪でワークショップを開催し、科学技術の実践と人類学における「比較」の役割を検討した。この会議では共著を含む二本の論文を口頭発表した。この会議に参加したメンバーはこのテーマについてのプロジェクトを組織し、現在も活動を続けている。また、10月には当該分野の国際学会であるSociety for Social Studies of Scienceにて、International Network for Engineering Studiesの組織した分科会に参加し、研究成果を発表した。この分科会では、きわめて関心の近い専門家と詳細な意見交換を行うことができた。続いて11月にはアジア太平洋地区における科学技術論ネットワークの創立大会に出席し、オーストラリア、ニュージーランド、中国、台湾などの研究者とアジア太平洋地域における科学技術論のあり方についての議論を行った。 これらの国際会議出席の結果、今年度は最終年度の成果のとりまとめに向けた国際的なネットワークの構築と共同研究体制の準備に成功した。最終年度のプロジェクトへの協力者は、専門分野の面では人類学、科学社会学、科学史、技術史などにおよび、国籍の点ではデンマーク、ハンガリー、台湾、アメリカに及ぶ。彼らとの討議をとおして最終成果のとりまとめは着実に進んでいる。
|