前年度に引き続き、海外に移住したキューバ人の追迹調査としてビデオカメラによる撮影を合わせて海外調査を行った。7-8月にはキューバにて国内に残った人々へのインタビュー調査と、一時帰国した人々への調査を行った。12月冒頭の一週間には、アメリカ合衆国に移住したキューバ人女性へのインビュー調査と、職場での撮影を行った。その後、7-8月の調査でキューバ現地での時間および撮影が不十分だと感じられたため、改めて12月の3週間をハバナ市での調査・撮影を行った。9月のハリケーンの直撃によって政権交代後の融和策が一転して引き締めに代わり様々な問題が抑圧され、人々の生活を圧迫している時期と重なっていたため、結果としてより詳しく明快に、なぜ人々が出国を望まざるを得ないのかを記録することができた。また、7-8月にキューバで撮影した映像をアメリカ合衆国在住の女性に見せ、その感想と議論の内容を録画することによって、単に国外にいけばなんとかなるというような単純な希望を持っているわけではないことも鮮明になった。その彼女の複雑かつ深い分析を記録したビデオをキューバに残る人々に見せることによって、彼らが初めて生々しく目の当たりにする国外生活の困難の実態と自身のキューバ国内の苦境とをともに複雑に分析する姿をとらえることとなった。次年度は過去2年間にわたって撮影記録をしてきたこれらの映像を、90分程度の映像作品にまとめる。若者の労働意欲と希望の問題に関して新たな光を当てることを目的として始めた本プロジェクトであるが、奇しくも全世界の経済危機が起きたため、今後、この作品はある国の若者の就職難や希望の持ち方に限られた問題としてではなく、グローバルな経済構造と希望に関する問題への個々人の対応のあり方へと視野を広げたものにしていきたいと考えている。
|