今年度は、本研究を構想するにいたった前身の研究である「英国の文化遺産産業における『自文化』表象に関する人類学的研究」(平成16年度採択科研)の最終年度が繰り越されたことで、その繰越科研費によって9月に渡英調査を実施した。繰越科研と本研究の研究地域は重複するため、そのさいに本研究の調査も行った。 本研究の調査としては、とくに、コッツウォルズ地域北部の町、チッピング・カムデンにおいて進行中の「コートバーン博物館」の開館に伴う組織内の新しい動きに着目し、同博物館の運営母体である手工芸ギルド・トラストのトラスト員に聞き取り調査を行った。また、同博物館は7月に一般に開館したため、博物館内部の展示についても写真とビデオに記録した。博物館の設立を目指す町レベルのトラストである手工芸ギルド・トラストの活動は、博物館の開館を契機に新しい段階に入った。そのため、トラスト内で新旧トラスト員の交代が見られた。どのような経緯でだれが新しくトラスト員になったか、またどのような役割を担っているのかなど主に組織内の改変をめぐって調査研究を行った。博物館開館までの同トラストの活動に関しては、6月に開催された国立民族学博物館の共同研究会「ソシアル概念の再検討:ヨーロッパ人類学の問いかけ」において「ツーリズムとコミュニティ:『外からのまなざし』を内包する英国カントリーサイド」というタイトルで行った発表の中にとりまとめた。
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