本研究は、明治以降の上川盆地を対象として、同地域に開発・近代化が進むなかで上川アイヌの人々の既存の社会関係や社会組織が解体・再編成された結果、同地域に暮らすアイヌの人々の認知・行動様式にどのような影響が及んだか究明を試みた。具体的な成果としては、アイヌ文化の最も重要な儀礼とされる「送り儀礼」が、旭川市街の建設が急速に進む明治20年代前後として、儀礼の場所や担い手が大きく変容することが明らかとなった。また、この変化の背景には、「歓農政策」と「集住政策」という殖民地政府によるアイヌ社会に対する生業転換と集住化が深く影響を及ぼしていることを指摘した。
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